77. 一度 住んで みたいと

週一度くらい、お茶飲んだり喫茶店でおしゃべりしたり、
しゃべらないでいたり、夕飯御馳走になったり。

「伊豆っていい所なんですって。山も海もあって」
「いず・・・。熱海の向こうの?」
「うん、辰井さん前から行きたいと思ってたんだって。
伊豆の踊り子読んで。」
「辰井さん?」
「うん。前の席のデザイナーさん。
よく、いろいろ連れてってくれるんだ、このごろ」

ずいぶん久しぶりで、あなたのアパートに行ったんでした。あのとき。

喫茶店のバイトしていた時は一度も、でした、ね。
喫茶店やめて、自分の部屋にいることが多くなってみたら、
あの部屋、居ここち良くなかった。それで、
また田中さんにお世話になって引っ越ししました。
同じ不動産紹介の店で。

「T線はどう? わたし一度住んでみたいと思ってたの。あのあたりに。
あ、これ。いいかもしれない。
Sから三つ目。便利だし。日当りはよくないけど・・・」
なんだか、自分のことみたいに、乗り気になって。
私も気分よくて、ぱっとそこに決ました。

始めて降りる駅、小さいけれどいい駅で、好きな街でした。
商店街も小さくて、駅の直ぐ近くの住宅街でした。
小さなお庭の隅に小さなアパートがあって、

田中さんて、ここでもいい勘してると思いました。           
今度は、急ぎでなかったので、運送屋さんに頼んで引っ越ししました、
少し荷物も増えていたし。
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by chigsas | 2010-03-01 08:18