80. 私が 私でなくなった だけ

「かわいいね。」
って言われても。
「あたし、かわいくなんかないもん」
て、心のなかで。

なにか大きなことがおきていたのか? でも、何も起きなかったも同じこと。
私が、私でなくなっただけ。

帰りの電車の中で、
「多田さん」
「ん?」

また少したって
「ねえ」
「ン?」

「あの、きょうは俺んちへ、帰らないか?」
「・・・・・・疲れているから、あたし、乗り物弱いみたい、ごめんなさい。来週なら・・・」

よく覚えてないけれど、次の週だったか、辰井さんのアパートにいきました。

「俺、先に行って地下鉄の改札で待ってるから」
って、帰りがけに横を通りながら耳打ちしてくれて、
改札のこっちにいると思ったら向こうに出て、
なんだかそわそわしているみたいでした。
靴の先っぽ見てたようだったけれど、靴でリズムとってたような。

混んでいる地下鉄で、私は辰井さんに依りかかって。
私は彼と一諸にいると私じゃなくなるんだと、そのとき気づきました。
全然別の人、それでその人をホントの私が見ていたんです。

私、人に寄りかかりたくない。電車でも、自分でつり革握って、
立っている方がいい。なのに、今は寄りかかって下向いたりしてる。

「ふん」と思いました。
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by chigsas | 2010-03-24 19:37 | 小説