83. 教室も 初夏の 夕方

仕事の引き継ぎとかどうしたのか覚えていません。
引き継ぎしなければいけない様な仕事は任されてなかったんですね。たぶん。
退職願いは一ヶ月以上前に出すこと、と、入社したとき聞いていたようなきがしたけれど。
あの場合、社長だって、すぐにやめてほしかったんでしょうね

二日くらい、部屋でゴロゴロしていたけれど、また、図書館に行ってみました。
それから、デッサン教室に。ずいぶん久しぶりに顔を出しました。
夕方だったので、田中さんも、高田君もいました。
その日にまん中に台にのっていたのは花でした。大きい花や小さい花、草や、
溢れるように大壺にまとめられた花たち、みんな一寸興奮ぎみだったみたい。

「すごいでしょうこの花、今日は先生の誕生日」
ちょっと蒸し暑いくらい、教室も初夏の夕方でした。

あの日、私に関係ないところで世界が動いている、となぜか思ったんですが。

「ひさしぶりだから、今日は速くお終いにして、ビール飲みに行こう!」
高田君は、ちょっときれいな花が気がかりだったらしいけれど、

「明日もまだまだきれいだよ、この花たち」
田中さんの一言で腰をあげました。

駅の近くのビアホールに三人で落ちついて、注文をききにウエイターさんが来る前に、
「どうしたのっ? すっかり、変わっちゃって!。」

わっと泣きたかったけれど。悲しかったわけでもないし、
理由もなく泣きたかったんだ、あのとき。

この時も私、外から見たらなんかシレッと、平気な顔してたんでしょうね。
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by chigsas | 2010-04-14 09:48 | 小説