88. 街の 灯りの 中で 

「あたしに、ってきた話なんだけれど、学校卒業したいから・・・・」
「?」
「仕事の話。・・・もう、遊んでいるのもあきたんじゃないの?」

デッサンの帰りにいつもの3人で、駅に向かって歩いていて、
何となく誰もしゃべらなくなったら、そういって、
田中さんは足を止めて高田くんの顔を見ました。

なぜかそのとき、
「あ、秋なんだ」と思いました。
人通りも途絶えていたからかしら。
ちょうど歩道ぞいの喫茶店がもう店を閉め始める時間だったからかしら。
あの時の街の明るさと言うか、暗さ。
今と違って光がもっと赤っぽかった。

私も高田君を見ると、田中さんは、
「駅の向こうに最近できたスーパー、あそこのいり口のベンチに座る?」

まただまって歩いて、スーパーのベンチに並んで座りました。
「ちょっと、お腹空いたね。サンドイッチと牛乳、買ってくる?」
「うん」
高田君が店の中に消えました。

一人で、事務所を持つことになった友人、といっても、
ずっと年上の男の人でした。
どういう知り合いなのかも説明無かったけれど、
多分勤めていた会社の関係だろうと私は勝手に決めました。

a0134863_2159142.gif

by chigsas | 2010-05-23 21:56 | 小説