93. おかしくて 一人で 笑って

それがおかしくて一人で笑ってから、受話器とりました。
「はい、篠原オフイスです」
なんだか不思議なくらいすらすらとでます。

「ああ、オオタさんね。篠原の家内です。
寂しいでしょ、そこ。何もないところで。足りないものだらけでしょうが、
さしあたって不便なものなにか?」
「まだ、仕事らしいことしていませんので、べつに・・・」
言いかけて
「流しに、手ふきタオルが、」
「そうね、明日篠原に持たせましょ。
なにか他にも気がついたら電話ちょうだいね。」
と自宅の電話番号も教えてもらいました。


最初の日は田中さんが、お昼頃に一度
「どう? いここちは?」
って電話くれた。
午後には篠原さんが二度。二度目は四時過ぎでした。

「今日は事務所に帰らないから、5時半頃に、鍵締めて帰って下さい」
電話帳をどう整理したらいいか、いろいろ考えて一日が過ぎてしまった。

時間通りに事務所に出勤することも、
あの事務所ではそんなに大変ではなかった。なぜかしら。
ほとんど毎日お弁当作って、持って行きました。

良くわからないけれど篠原さん多分、
あの、大きな出版社の社員だったか、
さもなければその会社の下請け会社の社員だったのかもしれない。
10年以上あの事務所に勤めたけれど、いまだに、知らない。
知らなくてもいいことだから。

電話帳、どう整理したのか良く覚えていない。
電話番以外、その次に頼まれたのが、
はがきに書いてある文章を原稿用紙に清書する仕事だった。
雑誌の読者らしい、子供の投書でした。
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by chigsas | 2010-07-02 00:55 | 小説