98. 丼ふたつ もやしが山盛り

普段なら多分、黙り込んでいる田中さん、
すごく怖い存在だったと思うけれど、あの日は、
あっけらかんと歩いていたんです。わたし。

「ああ、お腹空いた。」
目があって、うなずくと
「インスタントラーメン、食べるでしょ」
黙って台所に入って、ゴトゴト、じゃーじゃー、音がして、
「こっちへきて」
台所のテーブルにお丼が二つ載っていました。
もやしが山盛り。

そのあと、また黙って、ふたりで音をたてながら、ザキザキ食べました。
もやしがちょっと生だったので大きな音がしたのかしら。
匂いも豆の生の臭いみたいだった。

コップのお水をゆっくり飲んで、田中さん顔を上げました。
私、ずっと田中さんを見ていたんだ。

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「何がどうなったのか、整理して、話してみてよ。」

わたし、あのとき、なんだか、とても静かな気持ちで、
多分私は妊娠しているらしいこと。
まだ誰にも話してなかったことが言えました。
by chigsas | 2010-08-30 09:10 | 小説