100.空っぽの頭 心もからっぽ

今考えると田中さんが、どうして、ああいう知恵と知識が持っていたのか、
誰かに相談して知恵を借りたのか、不思議です。

あたしは、おとなしく、田中さんのいうことを聞いて、
いわれた通りにしていました。もう泣くこともなかった。
決定的に、私は私ではなくなっていたんです。
あなたのアパートで泣いて、空っぽになった頭、
心も空っぽになっていました。

田中さんのアパートに泊めてもらって、
確か次の日に田中さんに連れられてK病院にいった。

K病院に何日いたのか覚えていない。4日くらいだったのかしら。
憶えているのはK先生の言った言葉
「自分が何をしたか、見てみるかい? 向こうの部屋にあるものを」

何をいおうとしているかは、分からないわけではありませんでした。
でも、何も感じなかったのです。やはり、穴だらけの重い石。
もう一つ耳にのこっている、年とった看護婦さんのつぶやいた言葉
「赤ちゃんの泣き声、つらいでしょう」
今は思い返すと、身体の芯が冷たく重くなって、
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ふっと目だけがが熱くなるけれど。
あの時はなにも感じませんでした。

退院する日、あなたが来てくれるとは思わなかった。
by chigsas | 2010-09-09 08:14 | 小説