103. 優しく してくれて たんだ

でも、あのとき鏡をくだいて二人がバラバラに、
すごい寒い空間に離れることできたら、
あなたが夜の海に滑り込むことはなかった、でしょ。・・・ね。

次の日、なにもなかったように、出勤しました。
「すみません。お休みして、ご迷惑かけました」
「あ、いや、大丈夫だったよ。かみさんが、来ていてくれたから」
それだけでした。
田中さんがなんて話してくれていたかも、その時は気になりませんでした。
丸きり自然に、お休みなどしなかったみたいに、
当たり前の時間が流れ始めたんです。篠原さんは、コーヒー飲んで、

「じゃ、出かけるから」
と事務所を出て行きました。

電話番の他に、たしか、お清書の仕事もありました。
まだ、ワープロもあまり使われていない時代だったから。

そう、あれから直ぐ、ワープロという大きな器械が、
篠原事務所に入って、私も勉強させてもらったんだった。
で、その頃から、世の中が、
がらがら音を立てて変わり始めていったんですよね。

「みんなが、ずいぶん優しくしてくれてたんだ」
ってふと気がついたのは、ホントにこの間。あなたが、
夜の海の底に滑り込んでいった、イメージが浮かんだあと、だった。
それも、気がついたその瞬間はいつだったか思い出せない。
[いつの間にかそう思っていたんだ。あたし。

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by chigsas | 2010-10-02 09:16 | 小説