104. 細い糸で 編んだ 網

あの日から始まった時間、何もなかったように、
その前と全然変わらない時間だった、と、あの頃考えていたけれど、
今思い返すと、あの何日かを境にして空気の色が、
まるで水の中みたいに、変わってしまっていたんです。

気持ちよく冷たくて、重い。
その空気の中にあなたを引き込もうと私、無意識に細い糸の網を
張っていたんだ。たぶん。

あなた、その網に気がついていたかしら。
細くて、透明で。とても強い弾力のある糸。光の具合で、
時々だけれど。キラッと鋭く光る糸。光るときは金色に見える糸。

あの思い空気の中にあなたを引き込もうと私、
無意識に細い糸の網を張っていたんだ。たぶん。
あなた、その網に気がついていたかしら。

細くて、透明で。とても強い弾力のある糸。光の具合で、時々だけれど。
キラッと鋭く光る糸。光るときは金色に見える糸。
そういう糸でこまかくあんだ網、触らなければわからない。
もしかしたらあなた、触っても、気がつかなかったかもしれない。
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父さんと母さんには、「引っ越しました」とハガキ書いただけ。
あなたが、小兄さんに、わたしのアパート探しを手伝ったと
手紙書いてくれたから、父さんも、母さんも、すっかり安心した。

それで十分と思ったけれど。
それは私の思い込みだったんだよね。本当は。
by chigsas | 2010-10-07 12:27 | 小説