110. 光の明るさ だけではない

「ギーツ・・・」
大きな音に、ボタンを押した手を、思わずひっこめました。
あなたの部屋の入り口のブザー、小さい黒いボタン、
そおっと押したのになぜ、あんなに大きな音がしたのかしら。

冬の初めの静かな日曜日の朝、いいお天気でした。
アパート中の人を驚かしたかもしれない。
扉の隙間から、コーヒーの匂いが流れてきました。

「どうぞ。あいています。」

ゆっくりドアを開けると、光がいっぱいの空間がありました。
入り口のドアから差し込む光、
奥の部屋との間のドアも開いているので、
その部屋の右側の窓から差し込む光も・・・。

あの明るさ、だけど光だけの明るさではなかった。
あなたがぜんぶ開けっ放しにみえるような、明るさだった。

あなたって、いつも、どこにも汚れがなかった。
あなた自身にも、部屋にも、たぶん押し入れの中も、
引き出しの中も、外から見えるまんま。

あの頃私、気がついていなかったけれど、
あなた、心のおくに持っていた闇。
うぅん、・・・ そう言ってしまうと、
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違うなぁ。
by chigsas | 2010-11-21 13:50 | 小説