117. 私と 反対の 女

だから、あなたのところに押し掛ける口実を、
よく思いつくようになったんだ。

「勘違いで写植の指定失敗して、スペースに収まらなかった」
「このごろ田中さんに連絡がつかなくて不安」
「篠原さんの奥さん、電話で素っ気なかった、
私、失礼なこと言ったみたい」
「竹内さん、ニコニコ笑って穏やかだけど、ほんとは、
何でもちゃんと見ているんだきっと、私がイヤなこと言っても、
ニコニコして、虫がすかない」

なんでもよかった。あなたのところに行く口実になれば・・・。

私、どんどん軽くなって、あなたが嫌いな女、
多絵子さんとはちょうど反対の女になっていく、
あのころ、そう感じはじめていました。

でもあたし、ちっとも憂鬱ではなかったし、
緊張もしてなかったんだ。ホントは。

そう言えば。
結婚してからのことだけれど、リビングの絨毯にころがって、
TVみていて、っていっても、あなたは転がったりしなかった。
転がるのはいつもあたし。

膝抱えてすわっているあなたに、
笑った拍子で私がちょっとぶつかった、

あのときあなた、びくっとして小さく飛び退いた!

実際は私の方が、大きく飛び退いた、
その勢いで洗面所に飛び込んだ。
鏡に映ったあたし、目がまっ赤でした。
a0134863_18215727.gif
by chigsas | 2011-01-11 18:24 | 小説