121. その晩ではなかった

その晩ではなかった。

あなたが子犬を抱いていたの。
あなた、あの目をして。

抱いているのは子犬だと思っていたのに、
気がつけば、

ほんとうは多絵子さんだった。

目がさめて、窓から入る暗い光の中で、ジーとしていた 
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あたし。

こどものとき、もしかしたら、
赤ん坊にちかいくらい小さな子どもだったとき。
同じことがあった。

真っ暗な中で、知らないうちに目がさめていた。
かあさんが静かに寝ているのに、
私は隣で、目を覚ましていた。

目を覚ましているのは、世の中で、わたしだけだった。
真っ暗だった。
母さんの暖かいからだがが、横にあったけれど。

くっつくのは居心地悪い
みたいな気がして、ちょっと離れた。

寝ている母さんが、
無意識に引き寄せてくれようとしたらいい。

そこまでおぼえているのに、あのあと、どうなったのかなあ?
by chigsas | 2011-02-08 06:33 | 小説