123. 私の頭 真空になった

ゴミ箱の横の箱にはいっていた子犬を、近所のうちの植木の下に隠して、パンと牛乳置いてきたらしい。
帰りに、二人でその犬を見に行くことに決まったみたいだったけれど。
なぜこんなことを思い出したのかしら、私。

あの犬、それからどうなったのかしら?
通りがかりについてくるもんだから追い返すことができない、捨て犬。

いつものように押しかけるつもりで、あなたに電話しました。
「うーん、今日は、ちょっと。カンベン」
不意をつかれた私、
「ん? なぜ」
「なぜって、んーん。・・・取り込み中なんで」

夕方の篠原事務所の電話だったけれど、事務所の建物がいっぺんにぐらっと揺れた。灯りも暗くなった、いや、もしかしたら反対に目がくらむくらい明るくなったのかもしれない。
「引っ越しの準備で」

「・・・・」
「・・・・」

「まだ話してなかったけれど、・・・・・」
「きゅうに、決まったことで・・・」
手に持っている受話器、音を立てて震えだしてたかもしれない。

「仕事場、もつことになったんだ。ここで仕事するの、落ち着かないし」
その瞬間私の頭、真空になった。
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by chigsas | 2011-02-23 14:48 | 小説