124. あなたが もう一人 いたんだ

しばらくして思いついたことが、
「おととい、いったとき、全然、そんなそぶりもなかったのに・・・」
でも、言葉にはならなかった。

あなたも、だまったまま。で、あたしの方が、切り替えは早い。
「あたし、おてつだいするよ」

一瞬黙ってから
「いや、コノちゃんに手伝ってもらっても」
「困るんだ! ふン 邪魔になるだけだ、もンね」って言葉のみこんで
「ンじゃー」

帰り支度して立って電話してたんだけれど、
そのまま椅子に腰を落としてしまった。
一人でお湯を沸かして、インスタントコーヒーをマグに溶いて、
また椅子に腰掛けた。

ぼーっと座っていたら、篠原さんが帰ってきた。

「どうしたの?」
「帰るとこでした、びっくりさせて・・・。すみません」
「遅くまで、ご苦労さん。きをつけて」

事務所のドアを閉めて、廊下から階段降りながら、あたし、
「あなたのところに今晩のこと聞いてもらいに行なけりゃ!」
って思っての。
あたしの頭の中には、あなたがもう一人いたんだ、あのとき。
もう一人のあたしが、
「野田さんに話そう!!」
そう思ってたの。そうすれば、いいんだって。
124.  あなたが もう一人 いたんだ_a0134863_12361791.gif

あの晩はすごく長かった。
by chigsas | 2011-03-07 12:38 | 小説