126. 一瞬 あなたが 消える

前日の晩から、ずっと続いていた、心もとない、頼りない感覚。
あなたの周りに薄いもやが幾重にもかかっている。
もしかしたら、もやは、あたしが張り巡らせている網かもしれない。

あたしは、じっとしている。
あなたの姿がすこーしはっきりみえてくる。だのに一瞬、
あなたが消える。

あたしが動くと、あなたが見えなくなる。

何日かして、めったに電話なんかくれないあなたから
「うちの事務所にくる?」
「えっ! ?」

間違い電話かな、と思いました。
あなたの声とはわからなくて、受話器、すこし耳から離して、

「わっ」って声が出たかもしれない。

「ん? なに?」
「わーっ、のださんっ」
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by chigsas | 2011-03-23 22:13 | 小説