129. あなたが 留守の

「マサオ君おふくろさん、話の分かる人、」ってあれはちがうんだ。と、
チラっと思ったの、頭のどこかで。

みんなすごい昔のこと、ねえ。
あの不思議な事務所に始めて行ったときの私、
焼き鳥屋さんでレバ焼き食べていた私も、
どこに行っちゃったのかしら。

そう言えば、あなたの「おふくろさん」に会ったのは、
結局たったの一度でしたね。

お母様が、急に東京に出ていらした。後で気がつけば、
あの頃もう、お父様の具合が相当悪かったらしいけれど。
お兄さん夫婦に任せて。

「一日だけ無理しました。気にかかっていて。
あの子、小さいときからああいう子で、何も言わないで
、思ったことを押しとおして・・・」

あなたが留守のアパートに、急にいらした。
「野田の母、でございます」
インターフォンの向こうで聞こえる声
、何を言ってるか分からなくて、

勧誘の人なら管理人室で断ってくれるはず、と、
ピントのはずれたことが頭をかすめます。

「えっ? 野田の?」
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by chigsas | 2011-05-03 17:07 | 小説