140. 自分の 痕跡を 残さない

今思い出す、「ハモニカの穴」の一つみたいなあの部屋、
美代ちゃんと行った、公園の向こうの下宿と、
同じ匂いしてたんだよ。カビの匂いに近いけれど、全然違う匂い。

いくつか変わった仕事場、どこも、おなじ匂いだった。
必要なものしか見えていない場所。

人が、長い間、そこにいたはずのに、何の痕跡もない場所。
そこで暮らした人の息の香りだけが、少しずつ積み重なった匂い。

どの仕事場でも、あなた、
帰るときには、何もかもきれいに片付けていたでしょ。
自分のいた痕跡を残さないように。

仕事場を持ってから、
私がいくといつも、すぐ仕事を片付け始めた、
そういえば・・・・・。

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by chigsas | 2011-07-20 13:58 | 小説