144. 夕焼けを背負って

「大変そうに見えるんだ。ちっとも楽しそうじゃないし」
何年くらい前だったか、久しぶりで私があなたの仕事場に寄ったとき。
やはり冬の初めだった。
あなた、机の前に座ったまま、寒そうにちょっと身体すくめてこっち見たの。

あたし立ってたから、上からあなたを見た。
夕方で、ガラス窓の向こうに夕焼けがひろがっていた。
あなた、不思議な表情で笑ったのよね、あの時。
笑っている目が夕日で乱反射した。どこかで見た目だって思ったけれど。
・・・あの目、お母様の目と同じ、今気がついた。

あのときはまだ、お母様には一度も会ってなかったから、
「どこかで見たことがある」と思った、
のじゃあ、なかったんだけれど、
まるで見たことがあるような不思議な感覚だった。

今思い出すと、夢の中のことだったのかな? 違うかしら?

篠原事務所、仕事の方向転換したのよね。あのころ。
あなたがあのことを言うまで、
私はそれに目をつむっていたんだ、たぶん。
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by chigsas | 2011-08-31 12:19 | 小説