146. 私も しばらく立っていました

「お祭りは終わった」って感じたの、
でも、あのときだけではなかった。

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「お祭りは終わった」って声、
何度も聴いていたんだ、
今思い返してみると。

最後にあなたが、
出かけていった夜、
あたしは一人だった。
本当に一人だった。
鹿浦さんの会社が整理されて、
あなた、仕事なくなったのに、
平気な顔していたのよね。
わたしもだけれど。

「鹿浦さんは田舎に帰って
お父さんの仕事手伝うんだって」
「あなたはどうするの?」
「うん・・・」

段ボール二つ持って帰った夜。
「うん・・・」といったまま
キッチンのテーブルの椅子にどんと座った。

わたしも、しばらく傍に立っていた。
そんなこと一度もなかったのに。

ななめ後ろからあなたの頭を見た。というか、
頭が目の前にあったの。
二十年以上も、そばにいたのに、
そういう角度であなたを見たのは、あのとき初めて。


そして
「あ、ずいぶん髪が薄くなったんだ」と思っただけ。
頭の地肌が見えたの。
by chigsas | 2011-09-15 20:07 | 小説