塀を乗り越えた「おばあさん」


いつものように暑い日、でした。
小さな公園で太極拳をしていました。

ちょっと長めの立禅。
どのくらいたったかしら?
何となく目をあけて、遠くの通りをみました。

公園の縁は細い道路、向こうが畑、畑の向こうが片側2車線の市道です。
市道には両サイドに舗道がついています。
見た瞬間、市道の向こう側の舗道から、おばあさんが車道に降りました。
日傘をさして重そうな荷物を反対の手にさげています。

おばあさんは、ゆっくりと車道を横断しています。あたりまえのように。
その間右からも左からも車は来ません。あたりまえみたい。

と、思っているうちに、おばあさんは舗道を横切って畑にに入りました。
車道には車が行き来しています。あたりまえのように。
私立禅の続きをしています。あたりまえの感じです。

畑にはカボチャが植えてあります。
じつは、このところの日照り続きで、葉は黄色く枯れているので、
かぼちゃ畑とは思えません、毎週ここで太極拳をしているので、
あそこはカボチャ畑だ、と知っているだけです。

ボーッとしている間におばあさんは畑の中を左に曲がったようです。
横から見ると、本物のおばあさんです。
腰から上が45度くらい曲がっている。
左手に提げている買い物袋は地面につきそうです。

その辺りで、立禅から意識が醒めはじめてみたい。
歩いている突き当たりは土塀? 
どうするつもりかしら? 塀にそった道があるのかしら?

こちらの頭が冴えてしまいます。立禅などどうでもいいや!

塀に突き当たると、傘を畳んで塀の内側にいれ、
大きな荷物は塀の上に「よいしょっ!」 
声など聞こえる距離ではありませんが、
たしかに「よいしょっ!」といいましたね。

それからおもむろに塀をよじ上り、塀の中にきえました。

「わー! すごーい! やったね!」
大きな声を上げて笑ったのは、たぶん2秒ほど後。
それにしてもあのおばあさんだれ?
あの塀を巡らせた大きな農家の人かな?