涼しくなったけれど 暑さで傷ついた街は、まだ病気?

久しぶりに街へ出た。
駅前の大通りを歩いている人の顔が気になる。ちょうど信号は赤。向こう側の歩道を自転車に乗った初老の女の人が行く。
こちら側の歩道では、ワイシャツの若い男が、ブリーフケースのようなものを下げて左からやってくる。

「朝だというのに、二人ともなんて不機嫌な表情だろう」
お天気はいいのに! 涼しいのに!
周囲を見回すと、バス停にいる人たちも、広場のベンチで煙草を吸っている人も、みんな仏頂面。
笑い顔はタクシーのたまりで、運転席に話しかけている仲間らしい運転手さんだけだった。
信号の向こうはコンビニ。ガラス窓にはられたポスターの写真はどれもみんな笑顔だ。

近くのスーパーまで歩く間も店に入ってからも、なんだか人の表情がきになる。みんな機嫌が悪い顔だった。
子供の手を引いた若いお母さんは怒鳴っていて、子供はいつものことなのか引っ張られながら、かわいい顔で笑いかけてきた。思わず手を振ってしまった。
ハンガーの乱れを直している店員さんも、しかめっ面だった。が、
本売り場だけは笑顔があふれていた。
といっても、ぜんぶ本の表紙やポスターの写真だ。
午前中で人影は少ない。歩いている人も下をむいている。

必要なものをかごに入れてレジに並ぶ。
レジを打つ店員さんも「レシートのお返しです」と、声はハイなんだけれど顔は引きつっている。
本売り場を通ると同じポスターがさっきと同じ顔で笑っている。

信号の傍のコンビニ、ガラスのポスターもみんな、さっきと同じ顔で笑ってる。
ガラスに映った私の顔もしかめっ面でした。

なんという街だろう!!   だけど
みんな、にやにやしている街は、もっと気味悪いかも?