6.ロル V ステーンの歓喜
あなたが兄さんの所に遊びに来るようになったころ、
玄関の前に水を撒くようにって母さんに言われて、バケツ下げた私とあなた、
鉢あわせしたのも、覚えてませんよね。
その時のあなたの下駄を履いた足。
兄さんの所に来る男の子たちの中で、あなたが特別の人になった瞬間だった。
とか、今頃、思い出してしまいました。
下駄の鼻緒を挟んでいた、あなたの足の指、いま思い出しても体の芯がきゅっ
と鳴る、あの感覚が何を意味しているか、
その時の私には、わかっていませんでした。
私の本棚に「ロル・V・ステーンの歓喜」っていう本、表紙が茶色くなってあ
ること、知ってたかしら?
その周りに、並んでいるデュラスの本については、結婚した頃、
「君、変わった作家好きなんだね」って言っただけ。
その時私、慌てて話題を変えたのでした。
もっとも、結婚したと言っても、あなたの事務所のそばにマンション借りて、
そこへ二人の荷物運び込んで引っ越して、名字変えただけ、だったけれど。
ずっとあとになって、「ラマン」が映画で日本でも評判になったとき,
「君の本棚に並んでいる作家だね」って。
多分、あなたにとって「訳の分からない私」はこの部分だけ、
と、そのとき思いました。
ほんとはこれが、あなたに対する私の、いちばん大事なことなのです。
今気づいたことなんですが、あなた、
東町の家で、私の部屋に来たことなかった。
いいえ、結婚するまで、わたしの部屋に来た回数、片手で数えられるくらい。
そうでした。いつも私が、あなたの所に押しかけていって、
言いたいこと気が済むまでしゃべって・・・・ってパターン、でした。
玄関の前に水を撒くようにって母さんに言われて、バケツ下げた私とあなた、
鉢あわせしたのも、覚えてませんよね。
その時のあなたの下駄を履いた足。
兄さんの所に来る男の子たちの中で、あなたが特別の人になった瞬間だった。
とか、今頃、思い出してしまいました。
下駄の鼻緒を挟んでいた、あなたの足の指、いま思い出しても体の芯がきゅっ
と鳴る、あの感覚が何を意味しているか、
その時の私には、わかっていませんでした。
私の本棚に「ロル・V・ステーンの歓喜」っていう本、表紙が茶色くなってあ
ること、知ってたかしら?
その周りに、並んでいるデュラスの本については、結婚した頃、
「君、変わった作家好きなんだね」って言っただけ。
その時私、慌てて話題を変えたのでした。
もっとも、結婚したと言っても、あなたの事務所のそばにマンション借りて、
そこへ二人の荷物運び込んで引っ越して、名字変えただけ、だったけれど。
ずっとあとになって、「ラマン」が映画で日本でも評判になったとき,
「君の本棚に並んでいる作家だね」って。
多分、あなたにとって「訳の分からない私」はこの部分だけ、
と、そのとき思いました。
ほんとはこれが、あなたに対する私の、いちばん大事なことなのです。
今気づいたことなんですが、あなた、
東町の家で、私の部屋に来たことなかった。
いいえ、結婚するまで、わたしの部屋に来た回数、片手で数えられるくらい。
そうでした。いつも私が、あなたの所に押しかけていって、
言いたいこと気が済むまでしゃべって・・・・ってパターン、でした。
by chigsas
| 2009-07-16 22:05