14. 見つめて いる 目

二人ともしばらく黙って何も載っていないないテーブル見ていました。

「一週間くらいまえに、関さんがお見舞いにいったと、電話くれたの。
・・・そうだよね。まだ私たち十八だもの。
・・・ひどく悪いらしい。もう・・・」
私と違って心も体も健康そのものだった美代ちゃんには、
病気や死は遠い世界の話。
だから余計にショックも大きかったのでしょう。

もうあなたの耳に入っているのかしら、と、反射的に思いました。

良い奥さんになるには男の人のこと良く理解しなければいけない。
そう思って男子高校選んだという田絵子さん。自分のための夫が、
自分の前に現れること、まだ疑っていないんだ、きっと。

美術室で歌っていた田絵子さんの横顔・・・。私の胸、はりさけそうでした。
あなたに田絵子さんの病状誰かが話しているなら、あなた、
どんな目をして、何見てるのかしら。とぼんやり考えました。

美代ちゃん、お母さんが卒業した私立の女学校にその頃できた短大に、
親の勧めどおり通い始めてました。
気分を切り替えた美代ちゃんは、自分の学校のこと
ちょっと話してくれたらしい。

それから、「ねえ、予備校ってどう?」
ってきかれて、はっと我に返ったけれど、どう答えたのかしら。

どのくらい座っていたのか、どうやってお店出たのかも、覚えていません。

あのころ、あなたは一浪のあとデザインスクールに入って、
学校のそばのアパートに引っ越した、と小兄さんから聞いていました。
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by chigsas | 2009-08-01 10:19