17. 小さな 電気釜

新聞紙の包みの中から、ピーマンの袋出して私の方につきだしたので、
反射的に受け取ると新聞包み脇に抱えて、こっちに手を差し出す。
また反射的に袋を渡すと、中からピーマンを1つつかみ出して、
袋を返してきた。

ちょうど信号が青になるのを待っていたので、あなたの手元見ました。
骨張って細い指が、器用にピーマンを解体していたんです。

信号が青になって人が歩き出すと、筋に沿ってきれいに三つに分けられた
ピーマンと、種と、へた、私の持っていた袋にぽんと入れ、
そこからは少し急ぎ足。

パチンコ屋さんを曲がって100メートルくらい、
門が玄関にぴったりくっついている家。玄関脇のドアから階段上がって
左、右と曲がって突き当たりが、あなたの部屋でした

「夕めしの支度途中だったんだ。コノちゃんに野菜炒めごちそうしちゃうな」
あなた、私を部屋に残して、外に出て行きました。

あの季節だから、まだ明るかったけれど、6時過ぎてましたね。
6畳の部屋にベッドと折りたたみの細長いテーブル、
テーブルの端に小さな電気釜、
ご飯の炊きあがった匂いで、急にお腹すいてきて、
同時に、こんな時間に押しかけて悪いことした、と気づきました。

でも、もう仕方ない。
部屋にあったのは他に大きな本棚。
本や、食器や、小さな赤いテレビなど、きれいに収まっていて・・・。

「ここ、駅に近くて、安いんだけれど、ダイドコやトイレ共同なんだよな」
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by chigsas | 2009-08-07 05:33