23. 三日がかり 楽しかった

次の日、9時半までには工房に行くことになっていたので、
顔と手足洗っただけでベッドに転がり込んでも、目は冴えるばかり。

あなたに電話するまでは、明日の仕事の資料を用意していくつもりでした。
以前に古本屋さんで手に入れたコーヒーカップとスプーンの写真集から、
きれいなデザインをトレーシングペーパーに写して・・・。
でもベッドの中では頭は空っぽのまま窓が白んでくるまでごろごろ。
知らないうちに寝入ってしまったらしく、気がついたら朝7時。

「すみれ工房」って言う名前に親近感がもてて、電話した職場でした。
新聞の地方版の下の隅に出ていた小さな広告。
『ハンカチのデザイナー募集』とうたっていました。
所在地はアパートと同じ区内。条件も書いてなくて
『希望者は電話をください』と、それだけ。

昼中にアパートにいると、合い鍵握られている母さんが不意に来たりして、
予備校に行ってないことばれてしまう。
毎日学校に行くくらいの時間には部屋をでて、駅の売店で新聞買って、
山手線ぐるぐる回ったりして、それから、
ちょっと離れた区の図書館に行ってみたりしていました。

あのころ、三大紙の地方版には求人広告が結構出ていたんです。
あなたはそんなこと知らなかった。何度目かにあなたのアパートに押しかけて
仕事探しの話したとき、驚いてましたね。
今のように週間の専門誌なんてない時代でした。

電話してみた「すみれ工房」。感じのいい男の人が出て、
「何かデザインしたものあったら持って面接に来てください」。

それで、図書館に行って写真集借り、スケッチブックに花のモチーフを描いて
色鉛筆で色を付けて、なんとかそれらしい物でっち上げました。
三日がかり。でも、今思うとなんだかとても集中できて、楽しい三日間でした
23. 三日がかり 楽しかった_a0134863_6492842.gif

by chigsas | 2009-08-20 06:55