33. 真ん中に 大きなテーブル

火曜日の面接予定は「デザイン事務所アシスタント」の方でした。
あなたのアパートのあるS駅から歩いて10分くらいの小さなマンション、
周りも小さなビルやマンションが並んでいる区域でした。
あなたとは反対の口に出て、歓楽街を通り越さなければいけないのが、
その頃の私には怖くもあり、ちょっと心躍ることでもありました。

多分私、二つ電話したときにはもう、ここと決めていたんだと思います。
二部屋と小さな台所、一階だから日当たりの悪い部屋。
でも、壁も棚も仕事机も白と明るいグレーでまとまっていて、
落ちつく事務所でした。

前日の美容院の効果は、金田さんの予測以上でした。
「先生もう帰ってきますから、上がって待っててください。
近くの店でお昼なんで・・・。」
玄関のブザー押すと出てきた若い男性。
ブルーのチェックのシャツがさわやかでした。

部屋の真ん中を占めている大きなテーブルのこちら側に
折りたたみの椅子出してくれて、デザイン雑誌を一冊、テーブルに置いて、
自分は向こうの隅のライトの下で何やら厚いファイル広げます。

テーブルの向こうには大きな製図板が、斜めに立っていました。
靴を脱いで、出してくれた椅子にかけて雑誌を広げると、
ほとんど同時くらいにドアが開きました。
洗いざらしのGパンとTシャツの男性。
「や、待たせて・・・。多田さんだ、ね。・・・境です。」
あわてて椅子から立ち上がってお辞儀する私に、

「あ、掛けたまま、気楽にきらくに」みたいなこと言って、
すこし緊張しているのはご本人のようでした。
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by chigsas | 2009-09-09 13:37