46. 絵のような 配置で

「?」
「風呂だよ、銭湯」

ガラッと戸が開いて、赤い花模様の細いパンツで、
頭の形がはっきり分かるほど髪を短くした女の子が飛びこんできました。
入り口近くに突っ立ったままの私にぶつかりそうになって・・・。
えっ、この人が? と一瞬思ったけれど。
お風呂の道具でなく大きな画板、抱えていました。

反射的に少しよけた私を無視して彼女、
向こうの角に立てかけてある三脚と椅子引きずってきて、組み立てながら
「おはようございます」
小さく低い、静かな声です。

部屋の真ん中に丸テーブル、その上にリンゴと壷、
『絵のような配置』で並んでいる。

「椅子もってきて、座って待ってるかい?」と、ベレー帽の男性。
「いえ、いいです。このままで」

ここ、もとはお店屋さん? 何屋さんだったんだろう。
床はコンクリート、壁にはカーテンがかかっているので分からないが、
入り口のガラス戸以外には、窓がないらしい。
ガラス戸の反対側は一段高くなった部屋。仕切りは下にガラスの入った障子。
ガラスを通して古い桐ダンスが見えるから、隣の部屋は和室なんだ。
聞こえるのは、さっき入ってきた女の子が、ピンで紙を画板に止める音だけ。

今思い出すと、薄暗い部屋だった。
上からテーブルの静物にいくつかのライトが当っていた。
ベレー帽の人以外、最初からいた二人は男だったか女だったか。

私、立ったまま、うとうとしていたみたい。
「先生、教室に入りたいという人が、・・・。」

「ああ。」
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by chigsas | 2009-10-23 18:43