50. カレーの 匂い?

山手線をわざと遠回りしてO駅で下り、一瞬考えてしまいました。
前の晩は田中さんにくっついて駅まで歩いたけれど、
あのデッサン教室は夢の中だったのかしら。
電車から降りた人が改札から散っていって、
人影が減った構内と明るい見覚えのない街並を見ていると、
それまでハイだった気分が急にしぼんでいきます。
もうお昼近い時間。
駅の斜め前の角が、小さなおそば屋さん、古い店らしい。
かすかにカレーのにおいが流れてきました。
通りの信号を渡って入ってみると、お店はガランとしています。

壁際の椅子にかけて、画材屋さんから担いできた大きな袋を
横の椅子に置いたら、身体中の力が抜けた。

「芦田先生のところの?」
焼いた杉らしい板に和紙を貼ったおそばのメニューが
目の前に出されて、店の主人の声。
「芦田先生?」
「絵描きさん」
「・・・、あ、デッサン教室の・・・」
私、何秒か眠ってたらしい。

「この近くですよね。道が思い出せなくて・・・。
カレーうどんお願いします」
「カレーうどん。ですか?」
「はい」
さっきの匂いは駅の隣のスタンドからだったんだと気がつきました。

カレーうどんて、カレーの辛さと香りの中に甘みが隠れていて、
元気出しなさいって言ってくれているみたいなところが、好きです。

何時だったか、あなたにつきあって下町歩いて疲れて、
おそば屋さんに入って、カレーうどんって言ったらあなた、
「こういう店でカレーうどん注文するの?」
珍しく非難がましい口ぶりでしたね。
50. カレーの 匂い?_a0134863_1120254.gif
by chigsas | 2009-11-02 11:23