52. 鼻が壁に くっつきそうな

「自宅はどこ? 」
「Kです」
「アパートと近いんだ」

コーヒーが来て、そのまま何も入れずに一口飲んで、
「今日は金曜だから、明日引っ越ししなきゃいけないんだ。
そうだ、この先に学生向きに部屋を紹介しているところがあるから、
いい部屋が見つかるかもしれない。お茶飲んだら行ってみる? 
ところでお金あるの?」
「はい。なんとか、あると思います。」

田中さん、何でもパッ、パッっと決めてくれたんです。
前の晩に浮かんだ田中さんの顔と、その日は少し違ってはいましたが。
一回り締まって固くて弾んでいる。
「はい!」と言ってついていくしかない感じ。

「敷金一ヶ月だけだから、とりあえずこの三畳の部屋にする?」
「はい」
入会金を払うと、カウンターの中の学生風の人が大家さんに電話してくれ、
すぐに見に行くことになってしまいました。

「デッサン教室の隣の駅から、私鉄に乗り換えて二つ目、
駅からも歩いてすぐ。いいでしょ? 私のアパートはその二つ先だし。
隣駅まで歩きましょう。電車に乗るよりその方が早いから」

あなたのアパートのように、大家さんの2階の部屋でした。
入り口も大家さんの玄関の横。門はなくて玄関が直接通りに面している。

三畳の部屋って、鼻が壁についてしまいそうに狭いんです。

「押し入れ狭いけれど、
さしあたって布団と着るものだけ入ればいいでしょ・・・」
押し入れは一間幅の下半分でした。
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by chigsas | 2009-11-08 18:01