57. 半分ねぼけて 伸びを したら

結局、前の日と同じおそば屋さんに入りました。

店の主人がテーブルを拭いていて、まだ、のれんも出ていませんでした。
「早いですね。ちょっと待ってください」
拭き終わったらしい隅のテーブルに腰を下ろすと、
ちらとこっちを見てそのままテーブルの上を整えています。
白衣を着た小柄な主人がきびきび働いているの、
朝らしくて気持ちいいと思いました。

男の人が本気で働いているところ、それまでに見たことあったかしら。
父さんは家ではいつも、タラッとくつろいでたし。

「カレーうどん、ですか?」
「アッ。はい」

その晩は、田中さんのアパートに泊めてもらいました。

駅から5、6分の静かな住宅街。
大家さんとは別棟で二階建ての1階。4畳半二部屋に2畳くらいの台所。
小さな、半畳ほどのお手洗いもありました。
「上も同じ間取りの部屋なの。共働きの若いカップルだから、静かでしょ」
上と下に同じ一室ずつ。一口にアパートって言っても、いろいろあるんだ! 
と大発見した気分でした。

「すぐ眠れるように」
って田中さんがウイスキーをお湯にたらしてくれて、
疲れていたせいか、すぐ寝入ってしまいました。
あんなに人の近くに寝たのは中学の修学旅行以来、だったけれど・・・。
四畳半の部屋いっぱいに布団二つ並べたので、
端が重なっていたんですから。

目が覚めて、半分寝ぼけて伸びしたら、
田中さんもう着替えして布団もあげていました。

冷たい牛乳に、キューリとレタスに市販のドレッシングかけたサラダ、
このごろあまり見なくなったポンと飛び出すトースターの薄切りトースト。
サラダのおいしかったこと。ドレッシングのあの独特の匂いも、全然気にならなかった。
二畳の台所、その一角の小さなテーブルの朝ご飯でした。
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by chigsas | 2009-11-25 12:52