61. ザマア カンカン だれに?

「疲れてるね。早く帰って、お風呂に行って、早く寝なさい」

あの日は、結局何も描かなかった、たぶん。

駅前の交番で、お風呂屋さんがどこにあるか聞いて、
商店街の外れのマーケットでパンと牛乳、インスタントコーヒー、
洗面器や石けん箱なんか買って、アパートへ行きました。

あの頃にはもう銭湯も平気になっていました。
知らない町だから余計気楽だったのかもしれません。
帰りに駅前の大阪寿司屋さんで、小さなのを一箱買いました。

鍵開けて、入り口で手探りで、電気のスイッチ入れたら裸電球が灯りました。
共同の台所でやかんにお湯沸かしたけれど、お茶が無いこと気がつきます。
畳の上に画板を置いてマグカップにインスタントコーヒー。
箱から直接手でつまんでお寿司をたべながら、
「ザマア、カンカン」

あれ、誰に言ったんでしょう。

押し入れの荷物出して、押し入れの中に布団を広げ、
そのまま潜り込んだら、疲れがどっと押し寄せてきました。

ごとん、肘が何かにぶつかったので、目が覚めました。
いや、目が覚めた瞬間に肘が押し入れの壁に当たったというのが本当のところ
だった。押し入れの隅に細い光の筋。
「あたしの場所だぁ。」

お隣の部屋の光が漏れてるんだ。お隣帰ってる。
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by chigsas | 2009-12-09 13:52