65. 小さな 喫茶店

「じゃあ、アルバイトでもいいんでしょう」
「そうですね。・・・・・・そのほうが、いいかもしれない・・・」
また少し考えていたようで、

「知り合いから、アルバイトしてくれる人を頼まれているんだけれど」
「?」
「小さな喫茶店、昼間だけ4、5時間でいいらしいけど、でも、
予備校は昼間でしょう」
「きっさてん? あ、昼間でも、いいです」
「もし、よければ、ちょっと待って」
席を立ってカウンターの隅の電話をとりあげました。

職安て聞いたことあっても、入ったことなかった。
見回すと入り口の右側に小さなカウンターがあってそこが受付らしい。
手前の広いカウンターの前にはいくつかのテーブルが並んでいる、
テーブルの上にファイルらしいものが立ててあったかしら。
奥のカウンターの前には椅子が沢山並んでいたようでした。

「ごめん、ごめん。ほんとなら、
まずあそこの受付で、手続きしなくちゃいけなかったんだけれど・・・、
今電話したら、その店で、ぜひ来てほしいっていうから。
国電のK駅から歩いてすぐのところ。あ、そうだ、どこに住んでいるの?」

「Nです。Kなら多分バスで8分くらいかしら。北口ですか? それとも、」
「北口だけれど」

「高校時代あそこの古本屋さん、良く行ってたから、分かるかもしれない」
「そうだ、予備校の学生証みせてもらっていい? 
メモでいいから、住所と電話番号も書いてくれる?」
なんだか、すっかり、友達きぶんでした。

丁寧な地図書いてもらって、お昼過ぎにそのお店に一人で行きました。

駅から近いけれど、ちょっと路地を入ったところなので、
静かな小さな喫茶店でした。
カウンターに椅子が6つ、テーブルは2つだけのホントに小さな喫茶店。
ママさんが一人でやっていました。

「夜は、お酒を出すから、バーなんだけれど、昼間は喫茶だけ。
でも、九時には閉めてしまう。夜も、時々友達が手伝ってくれるのよ」

まだ自己紹介もしないうちに気さくなママでした。
きもの着てたから落ちついて見えたけど、たぶん30代だったんでしょうね。
「よかったら、今日からでも、無理かなあ?」
「い、いえ、大丈夫、です」

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by chigsas | 2010-01-01 13:57