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目が 醒めた と 感じた

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by chigsas | 2012-05-10 05:35
何か違う、と3人とも感じていたのか?
いや、わたしだけは、わかっていたのだけれど。

友人もNも何かが始まると思っていたのに。
あそこでお終いだった。
あそこはお終いの場所なのだ。
そこから、子犬が一頭だけ、助け出された。

そして、ワゴン車が走り去ったから、
三人はもう、関係者ではなくなったのだ。

3人の乗る黄色い軽自動車は山の下を回る細い道を走った。
速くもなくゆっくりでもない速さ。
泥水の中を走っているみたいだ、と、思った。
友人は隣で、どこを今見ているんだろう?

ワゴン車で走り去った男たちはさっき、
若い女に顔を向けて
「じゃあ、手続きは、支所で。書類だけですから簡単です。
場所わかりますか?」
「あ、堀川町ですよね」
答えたのは運転席の若い男。女は膝の上の犬をなでていた。

私と何度も顔を合わせたことのあるワゴン車の男たちは、
この日、完全に私たち三人を無視]していた。

無視せざるをえなかった。
誰もが、仮面の顔で通さなければいけない場所だ、
・・・から。
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by chigsas | 2011-10-29 14:04
なのに、辰井さんの子供なのだと言はなければ、と思ったとたん
「いやだよ!あたし! ・・・。あたし、死にたくないよ。
辰井さんの子供なんか、産んでなんか。・・・・」
もう、涙なんかでないのに、からだ、ふるえていました。

しばらくして、私の震えが少し収まって
「今は、お産で死ぬ人なんていないんだよ、多田さん、」
「あたしは、死ぬ」

「辰井さんのこと、好きじゃあないんだ」
「嫌いでもないよ」

「野田さんの、子供、産むんなら、...」
「?・・・・」
「死んだっていいけれど・・・」

「辰井さん、きっと、多田さんと結婚するつもりかもしれない。・・・。話してみたの?」
「いやだ!! 絶対!」
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それから後に起きたこと。ウソみたいな、まるで夢の中みたいなことでした。私に、起きたこととは、今も、思えません。
by chigsas | 2010-09-02 14:24
「字は下手でもいいから。読めるように書いて。
ゆっくりでいいから間違いのないように」
っていわれたけれど。

子供の文章だから変なところがありました。

聞くと、
「子供らしい方がいいから、変でもそのままでいい」

そういうものかな、と、なんだかおかしくて、
私は、くすっと笑ったけれど、

篠原さんは、いつもの通りのまじめな顔でした。
いつも暇を持て余していたけれど・・・、

あの事務所に一人でいるのは、それなりに楽しかった。

篠原さん、ほとんど事務所にいなかったんです。
仕事は出版社にいって、向こうでしているらしい。

何も説明もないので、私が勝手にそう思ったんだけれど。
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事務所なんて必要ないのに? と、ちょっと不思議だった。

一、二ヶ月たって、お使い頼まれるようになりました。
by chigsas | 2010-07-12 09:44
いいえ、こちらを見ようともしないで、アドバイスくれただけだった。ね? 
そうだった、よね。

親って、なんなんだろうか? 私ってなんなんだろうか? 
家族って?

そう思っても、、実際には父さんの顔も母さんの顔も、思い出しもしなかった。

鏡の向こうには、俯いているあなた。
それと、多絵子さんの、まっすぐ前を向いて歌っている顔だけ。

今、気がつくんだけれど、プールで日向ぼっこしているとき、
頭の中を行ったり来たり、浮かんでいたのは
あなたと多絵子さんだけだった、ような気がします。

ホントは何かが、私の中で起きていたのに、気がついていなかった。
だから、起きていないと同じだった。

金田さんが連れて行ってくれた美容院の椅子に座っていた私、
鏡の中で自分をにらんでいた私。あの目がホントの私だったかもしれない。

あなたは私を見たくなかった。
でも、本当の私があんな人だと、もしかしたら、
わかってくれていたかもしれない。ね、違う?

ときどきは美容院にも行くようになって、美容院の椅子に掛けて鏡に映る私、
糸が切れたタコでした。
そう。だんだん普通の子になっていたんです。

「これは私でないから、平気平気、へいきだよ」
って鏡に向かって言っていました。


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by chigsas | 2010-05-12 17:23

Published by デジブック
by chigsas | 2010-03-13 20:35

Published by デジブック
by chigsas | 2010-03-11 21:46
その後、デザイン会社に勤めて。なんだかずいぶん経って、
あなたに知らせておかなければと気がついたんです。

それで私あなたに、
「引っ越しました。仕事も変わりました」
ってはがき書いたら、直ぐ返事くれました。ね。
「いちど、来ませんか。」って、
あなたホントは、母さんからの電話に、
私から連絡無いとも言えなくて困ってたんですよね。

私は、うれしくなって次の日曜日にあなたの部屋に行ったんだけど。
部屋の様子は全然変わってなかったけれど、あなた、
また大人になっていて、ほんとは、また一寸遠くなったみたい、だった。

もう、あなた手の届かない所へ行ってしまうかなって、ちらっと思いました。
    
「ゴールデンウイークに、一緒に伊豆に行こうって・・・」
    
あなた、黙っちゃいました。
それから、軽く座り直して、ちゃんとこっち向いたので私が見たら、
横向いて。

それから、小さな声で
「このちゃん、なんだか変わったね」

「変わったの、野田さんの方だよ!」
大きな声がでてしまいました。
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by chigsas | 2010-03-08 07:57
週一度くらい、お茶飲んだり喫茶店でおしゃべりしたり、
しゃべらないでいたり、夕飯御馳走になったり。

「伊豆っていい所なんですって。山も海もあって」
「いず・・・。熱海の向こうの?」
「うん、辰井さん前から行きたいと思ってたんだって。
伊豆の踊り子読んで。」
「辰井さん?」
「うん。前の席のデザイナーさん。
よく、いろいろ連れてってくれるんだ、このごろ」

ずいぶん久しぶりで、あなたのアパートに行ったんでした。あのとき。

喫茶店のバイトしていた時は一度も、でした、ね。
喫茶店やめて、自分の部屋にいることが多くなってみたら、
あの部屋、居ここち良くなかった。それで、
また田中さんにお世話になって引っ越ししました。
同じ不動産紹介の店で。

「T線はどう? わたし一度住んでみたいと思ってたの。あのあたりに。
あ、これ。いいかもしれない。
Sから三つ目。便利だし。日当りはよくないけど・・・」
なんだか、自分のことみたいに、乗り気になって。
私も気分よくて、ぱっとそこに決ました。

始めて降りる駅、小さいけれどいい駅で、好きな街でした。
商店街も小さくて、駅の直ぐ近くの住宅街でした。
小さなお庭の隅に小さなアパートがあって、

田中さんて、ここでもいい勘してると思いました。           
今度は、急ぎでなかったので、運送屋さんに頼んで引っ越ししました、
少し荷物も増えていたし。
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by chigsas | 2010-03-01 08:18
あのジャズのあとも、私たぶん音楽を聴いていない。
あなたが、私の前から消えてしまったついこの間まで。音楽を聞かなかった。

あなたの部屋で、何気なく掛けたCDでした。
そして、そのときから、私のからだは、「音楽」そのものです。
チェロ。バッハの無伴奏チェロのあの出だしのメロディ。
テンポの速いマイスキーの演奏。

夜の闇が粘り着くように私の周りをめぐって私の身体に入ってきた。
そしたらそこは、ロル・V・ステーンが身を潜めている麦畑なんです。

暗い麦畑から、遠くに、明るいホテルの窓がみえる。
窓に見える影はS・タラの男じゃなく、あなた、と思いました。

そして、見えないけれど、部屋のどこかに多絵子さんがいる。

あなたの部屋で目にとまったCDを掛けて。そのとき、それからそのまま。
ずっと、低くいつも鳴っているんです。
聞こえないくらい低く、今も。
そして私はあの麦畑に身を隠してホテルの窓を見ている。今も。

あなたの部屋で、あのとき。
音が私の中で渦を巻いて、大きなうねりになって、落ちていった、そのとき、
闇にあなたがすい込まれていく音を、聞いてしまいました。

そうすると、あのホテルの窓の影はやはり、S・タラの男 とタチアナ?

あなた、その夜(夜更けだった、んですね)海に消えた。
ほんとうに、そうなの? 
「違う!」ってわたし、言い続けていたけれど。
その夜、フェリーから海に滑り込んでいった。

「飛び込んだ」って。
皆で納得させようとしても、私は、信じなかった。けれど。
すい込まれていく音、聞いてしまった。

辰井さん、適当に優しくて、てきとうに気軽で気持ちのいい人でした。
一緒にいると楽しかったし。わたし、いつも笑ってばかりいた。

毎週一度くらい、お茶飲んだり、喫茶店でおしゃべりしたり、
しゃべらないでいたり、夕飯御馳走になったり。
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by chigsas | 2010-02-19 20:05