<   2010年 07月 ( 3 )   > この月の画像一覧

「このちゃん、しばらく見なかったけれど、なんだか・・・」

あなたが引っ越しした新しいアパートの部屋でした。

「・・・」
「太ったんじゃない? ・・・・気のせいかな?」
「・・・・・・・・」

あなたが、出してくれたお茶に口をつけたところ、でした。

新築らしい明るいアパート、1DKという作りなのか、玄関の右に広めの台所があって、
そこの小さなテーブルの前に、こしかけていました。
あそこのPタイル明るいグレーとオフホワイトの市松でした、ね。

私、その市松見ていたんだけれど、なにも見えなかった。
あの市松の明るさだけ、今思い出します。
あそこのテーブルもオフホワイトだったはずなのに、あの日は、
a0134863_2113033.gif
気がつかなかった。憶えているの足許の市松。

私、男の前でなんか、絶対泣かない!
だのに、気がついたら大声上げて泣いていたんだ。

「太ってなんかいないよ!! ・・・。 太ったんじゃないよ。」
by chigsas | 2010-07-20 02:13 | 小説
「字は下手でもいいから。読めるように書いて。
ゆっくりでいいから間違いのないように」
っていわれたけれど。

子供の文章だから変なところがありました。

聞くと、
「子供らしい方がいいから、変でもそのままでいい」

そういうものかな、と、なんだかおかしくて、
私は、くすっと笑ったけれど、

篠原さんは、いつもの通りのまじめな顔でした。
いつも暇を持て余していたけれど・・・、

あの事務所に一人でいるのは、それなりに楽しかった。

篠原さん、ほとんど事務所にいなかったんです。
仕事は出版社にいって、向こうでしているらしい。

何も説明もないので、私が勝手にそう思ったんだけれど。
a0134863_9422676.gif
事務所なんて必要ないのに? と、ちょっと不思議だった。

一、二ヶ月たって、お使い頼まれるようになりました。
by chigsas | 2010-07-12 09:44
それがおかしくて一人で笑ってから、受話器とりました。
「はい、篠原オフイスです」
なんだか不思議なくらいすらすらとでます。

「ああ、オオタさんね。篠原の家内です。
寂しいでしょ、そこ。何もないところで。足りないものだらけでしょうが、
さしあたって不便なものなにか?」
「まだ、仕事らしいことしていませんので、べつに・・・」
言いかけて
「流しに、手ふきタオルが、」
「そうね、明日篠原に持たせましょ。
なにか他にも気がついたら電話ちょうだいね。」
と自宅の電話番号も教えてもらいました。


最初の日は田中さんが、お昼頃に一度
「どう? いここちは?」
って電話くれた。
午後には篠原さんが二度。二度目は四時過ぎでした。

「今日は事務所に帰らないから、5時半頃に、鍵締めて帰って下さい」
電話帳をどう整理したらいいか、いろいろ考えて一日が過ぎてしまった。

時間通りに事務所に出勤することも、
あの事務所ではそんなに大変ではなかった。なぜかしら。
ほとんど毎日お弁当作って、持って行きました。

良くわからないけれど篠原さん多分、
あの、大きな出版社の社員だったか、
さもなければその会社の下請け会社の社員だったのかもしれない。
10年以上あの事務所に勤めたけれど、いまだに、知らない。
知らなくてもいいことだから。

電話帳、どう整理したのか良く覚えていない。
電話番以外、その次に頼まれたのが、
はがきに書いてある文章を原稿用紙に清書する仕事だった。
雑誌の読者らしい、子供の投書でした。
a0134863_05107.gif

by chigsas | 2010-07-02 00:55 | 小説