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見えている、あの灯り、一つ一つの部屋の中に人がいるんだ。
明るくはない、窓の明かり、あの中には、家族がいるんだ。
夫と妻、もしかしたら子どもも。
愛し合っていた昔のようには幸せではないけれど。
寄り添っている夫と妻。
寂しくて、涙がでそうでした。

「電気もついて、鍵もあいているから、ちょっと入って待たせてもらった」
私がドアを開ける音に驚いたあなた。
「いいよ。そのままで」
立ちかけて、あたしの言葉であわてて椅子に座りなおした。
おかしくなって、くすっと笑ったのよね、
あのとき、あたし。なぜかしら?

あたしの部屋、こんな明るかったっけ? 
って思ったのは覚えてるけれど、二人とも話すこともなくて。

あなた、お茶を飲んだだけですぐ帰っていった。
あたし、いつものように愚図で、
お茶を沸かすのにも、
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もたもたしてたのよね。
手持ち無沙汰に待つ間、あなたは何考えていたのかしら。
と、今、思うけれど。
 
by chigsas | 2010-12-28 20:50 | 小説
もう一度カーテン閉めた。そのまま寝てしまったらしい。

目が覚めたとき、辺りはうす暗くなっていました。
お風呂の道具かかえて銭湯へ。
あのアパートではどこの銭湯にいっていたのか、
どこだったか思い出せません。多分駅の近くだった。

覚えているのは、何軒か灯のつき始めた家の、窓の明かりだけ。

街が夕方になっていくときの窓の明かりって、涙がでない?
おばあちゃんの引き出しみたい。いろんな匂いが混じって。

子どもだった私が、母さんに連れられていった母さんの生まれた家.
なぜか、一度しかいった覚えのない家。

裏が山だった。その二階。山に面した小さな部屋の隅にあった鏡台。
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そっとあけた。あのにおい。いい匂い。でも寂しかった。

見えているあの灯り、一つ一つの部屋の中に人がいるんだよね。
by chigsas | 2010-12-19 18:13 | 小説
あの日私、あなたに何を話したのかなあ。

「お昼すぐ用意するから」
というあなたの言葉を聞いただけで帰ってきてしまった。

脱いだコートとショルダーバッグ床に放り投げた。

ベッドに倒れ込んでみたら、窓はカーテン閉めたまま。
それで、もう一度起き上がってカーテンをあけた。

小さな木漏れ日の影がベッドの上をちらちら動く。
風が吹いているんだ。

あの部屋は、南向きだったけれど隣の大きな木に遮られて、
冬は日当りがよくなかったのよね。それが私には嬉しかったんだけれど。

「明るい日曜日なんか嫌い!」
じぶんの大きな声に、少しびっくりした。
日曜日の昼間、アパートはみんな留守でした。たぶん。

嫌い嫌い、大ッ嫌いなんだから。こんどは、こころの中。
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by chigsas | 2010-12-11 18:46 | 小説
たしか先輩の鹿浦さんから回してもらったアルバイト。
あのころあなた、デザインスクールの勉強より、
アルバイトの方が忙しくなっていたようでした、ね。

コーヒーの香りが、体中にひろがっていきました。

広い仕事部屋、壁も机も白い、日ざしも明るい。
あなたが動かす定規と鉛筆の小さな音。
少し離れたところで、静かに小さな花の絵を描いている。

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でも絵を描いているの、私じゃあなかった。多絵子さん。

静かで、幸せに流れる時間。

「あしたまでに仕上げる仕事、もうちょっとで終わるから・・・」
多分夢を見ていたんだ、瞬きするくらいの時間だったかしら。

あの日私、あなたに何を話したのかなあ。
by chigsas | 2010-12-06 11:30 | 小説