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いくつものスティールの囲いの中に
あなたみたいにフリーの人が、それぞれ仕事場を持っていて、
あそこも、不思議な空間だった。まるで蜂の巣。

そういえば、あなたの仕事場はいつも、
鹿浦さんの隠れ家だったのよね?
何度か、鹿浦さんのガールフレンドとあたし、鉢合わせしたもの。

それも、勤務中というのか午後の時間に。

みんな、自分のことに夢中で、
隣の囲いの中で起きてることや話なんか、耳にもはいらなかったし、
気にもしてなかった。

あのころ、みんな浮かれて、ハイだった。
あたしとあなただけは冷めていたけれど。

周りはお祭りだから、あたし達何も気にしなくてもいい。
気楽だった。よそのお祭りにまぎれこんで、二人で、
シラーッと見ている感じ、きっと他の人から見たら、
ちょっと気持ち悪い二人、だったかもしれない。

わたしたち、それが気軽でよかったんだね、二人とも。

お祭りって嫌いなの。
話したことあったよね。
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by chigsas | 2011-06-27 06:53 | 小説
「上野を8時の特急で帰りますから、
その前に1時間くらい話できるように。
真雄の事務所に連れてってくださる?」

パッパッと電車の乗り換え時間も計算して。

わたしは、ただ、うろうろ。

あのハモニカのような事務所のあったあたり、
今は大きなビルになっている。

あの小さな扉を
忙しそうに開け閉めして出入りしていた人たち、
どこに消えたのかしら。

あの狭い廊下で行き会っても知らん顔で
すれ違ったいた人たち。

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あたしもそうだったけれど皆、
あそこに出入りするのが後ろめたいみたいな感じだった。

お母様が見えたときは、でも、あなたの仕事場は、
あそこの事務所ではなかったのよね。

あの頃はもう、ハモニカみたいな事務所の次の、
また次だったかしら。

鹿浦さんの会社が借りている大きな部屋を仕切って、
その一つがあなたのスペースだった
by chigsas | 2011-06-20 06:33 | 小説
お母様がいらしたあの日は何でもない日だった。
覚えている程のこと何も起きなかった。
そう思っていたけれど、本当はそうではなかった。

お母様は私のこと、とても正確に知ってらっしゃるらしい、
と感じて安心した。
それは、私にとってすごく大きなことだった。
だからかえってあの日は、特別何もなかった日なんだ。

お母様、私が何をしてきたか。どんな人間か。みんなわかってらした。
うちの父さんと母さんより、事実を知っていらしたかもしれない。

「あなたがちゃんと私のこと話している」
うれしかったの。

「親のわたくしだって、何を考えているのか、全然分からないんだから」
って、本当ではなかったかも。というか、
あなた、考えていることは黙っていても、
起きていることは、話していたんだ。ね?

でも、ほんとは、そうじゃなくて、
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あなたの話から勘のいいお母様が、全部を感じ取って下さったのかしら?
by chigsas | 2011-06-13 16:35 | 小説
気がついたら自分がいて親がいたんだよね。
私もそうだけれど、そして、
兄弟とか、親類とか余分な人たちもぞろぞろ・・・。

そう言う「周りの物」を脱ぎ捨てて生きていく。
そこだけかもしれないね。二人に共通してたこと。

ほんとは私たちふたりとも、ずっと前から、
そう分かってた。ね。
糸の切れた凧じゃあなくって、
自分でちぎって切って生きてきたんだ。
二人とも。

で、こんどは。あなたが、糸を引きちぎった。
ひとりで、どこに行くの?

お母様がいらしたあの日は何でもない日だった。
覚えている程のこと何も起きなかった。
そう思っていたけれど、本当はそうではなかった。

お母様は私のこと、とても正確に知ってらっしゃるらしい、
と感じて安心した。
それは、私にとってすごく大きなことだった。
だからかえってあの日は、特別何もなかった日なんだ。

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by chigsas | 2011-06-06 20:00 | 小説