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「大変そうに見えるんだ。ちっとも楽しそうじゃないし」
何年くらい前だったか、久しぶりで私があなたの仕事場に寄ったとき。
やはり冬の初めだった。
あなた、机の前に座ったまま、寒そうにちょっと身体すくめてこっち見たの。

あたし立ってたから、上からあなたを見た。
夕方で、ガラス窓の向こうに夕焼けがひろがっていた。
あなた、不思議な表情で笑ったのよね、あの時。
笑っている目が夕日で乱反射した。どこかで見た目だって思ったけれど。
・・・あの目、お母様の目と同じ、今気がついた。

あのときはまだ、お母様には一度も会ってなかったから、
「どこかで見たことがある」と思った、
のじゃあ、なかったんだけれど、
まるで見たことがあるような不思議な感覚だった。

今思い出すと、夢の中のことだったのかな? 違うかしら?

篠原事務所、仕事の方向転換したのよね。あのころ。
あなたがあのことを言うまで、
私はそれに目をつむっていたんだ、たぶん。
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by chigsas | 2011-08-31 12:19 | 小説
「親のわたくしだって、何を考えているのか、
全然分からないんだから」
お母様の声、きこえます。
「ほんと、そうですね」
今なら確信もって相づちを打てます。
わからないし。分らなかった。分ることなんてない、絶対。

何日か前に、段ボール二つもって帰ったから。
仕事場をひき払ったんだとは思ったけれど。
あなたは何にも言わなかった。

次の仕事探すのかな、それとも、

少しのんびりするのかな。と思った。

うそ、違う、ちがう。
「普通の人はそう思うのかしら?」
って考えたのかなあ。
ううん! それも違う! 何考えてたんだろう、あたしあのとき。

「このちゃん、勤め辞めてもいいじゃない?。」
「えっ! なぜ?」
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by chigsas | 2011-08-22 06:34 | 小説
あたしの部屋は、あなたが最後に見たときのままの、ごしゃごしゃ。
いや、もっとごしゃごしゃがひどくなっています。
それで、いつのまにかあたし、
ここで眠るようになった。
ごめんね。

あの日あなた、夕方近く、
「ちょっと出かけてくる。多分遅いかもしれない。」
それだけだった。ね。
そんなこと一度もなかったのに、私、
普通のことみたいに思ったの、あの時は。

その晩は帰ってこなかった。
心配じゃなかった、っていうと嘘。でも、心配しちゃあいけない。
きっと心配されたくないんだ。って。思った。

その二日後の朝、電話で起こされた。
「警察?」
何を言われたかも分からなかった。パジャマのまま、大兄さんに電話して、
またベッドに潜り込んだ。
何年も連絡もしなかった兄さんに電話がつながった。「ふしぎ!」

あなたが消えた。
私、きっと、ずっと前から、あなたが私の前から一瞬に消えるって
知ってたような気がするの。今は。
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by chigsas | 2011-08-06 11:30 | 小説