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それと同時に心に浮かんだ一人の若い女。

車の助手席に乗り込んで、自分の膝をポンポンと二つ叩いた。
犬がそこに飛び乗った。
その瞬間、犬は「彼女のもの」になった。

女がドアを閉め、車の中からNさんに、笑顔で笑いかけた。
何も言わなかった。ただ、ニコッとしただけ。
Nさんもたぶん、だまったままだった。

車は細い道を上手に方向転換して走り去った。

友人と私、Nさん。
走り去る車のほこりで、我にかえった。

「わたしを、駅まで乗せてってくれる?」
N さんの言葉で、
三人は黙ったまま、車まで歩いた。
その横を、窓のないワゴン車が走り抜けていった。

ああ、やっとすんだ。と私は思った。
でも、始まっていたのだ。

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それは、突然
一つの現実として、私の中に
立ち現れた。

ガラスのボウルに細く切ったキャベツ、
塩を軽くふったけれど、固くて水気に乏しいから、
思うようにしんなりしてくれない。

が、黄緑の色は美しく、春の朝にふさわしい。
食器棚から、何も考えずに持ってきた鉢、
濃いコバルトブルーの釉薬をはじかせて、
小さな粒状の斑を浮きだたせている。

キャベツとその器の色が響き合った瞬間。

「汝ゆきて淫行(いんこう)の婦人(をんな)を娶り、
淫行の子等をとれ・・・」

この言葉が、その通り頭に浮かんだのではないが、
文語訳旧約聖書の「ホセア書」。

食事の準備はそのまま中断して確かめた。

それと同時に
心に浮かんだ一人の若い女。

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新しいタイトルは
「炎ではない」
ずっと昔見た映画の題名
「突然、炎のように」
から、思いついたのです。。

中身はすっかり忘れたけれど、
題名だけ未だに覚えている映画。

短い小説
(といえるかどうか? 嘘八百)
をいくつか、
書きたいと思います。


と、書いてみたけれど思った通り
変更できるかどうか?
パソコンて思うように使いこなせないんです。

本当は、私の心の中に何かが
動いていたのかもしれないけれど。

体が濡れたシーツに巻かれているみたいに、
寒くて動けなかったんだ。あのとき。
と、今、思うの。

「うん・・・」
それだけだった。
あなた、たった一本の糸も引きちぎって、海の中に滑り込んでいったんだ。

お祭りは終わった。
だから・・・・・・。

私たちには関係ないお祭りだったけれど。

東町の家の玄関の前で、あのとき、
始まったかもしれないお祭り・・・。

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お終い
by chigsas | 2011-09-23 22:42 | 小説
「お祭りは終わった」って感じたの、
でも、あのときだけではなかった。

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「お祭りは終わった」って声、
何度も聴いていたんだ、
今思い返してみると。

最後にあなたが、
出かけていった夜、
あたしは一人だった。
本当に一人だった。
鹿浦さんの会社が整理されて、
あなた、仕事なくなったのに、
平気な顔していたのよね。
わたしもだけれど。

「鹿浦さんは田舎に帰って
お父さんの仕事手伝うんだって」
「あなたはどうするの?」
「うん・・・」

段ボール二つ持って帰った夜。
「うん・・・」といったまま
キッチンのテーブルの椅子にどんと座った。

わたしも、しばらく傍に立っていた。
そんなこと一度もなかったのに。

ななめ後ろからあなたの頭を見た。というか、
頭が目の前にあったの。
二十年以上も、そばにいたのに、
そういう角度であなたを見たのは、あのとき初めて。


そして
「あ、ずいぶん髪が薄くなったんだ」と思っただけ。
頭の地肌が見えたの。
by chigsas | 2011-09-15 20:07 | 小説
私が、あの事務所にいる理由、私からみても、
篠原さんから見てもなくなっているのは、はっきりしていたんです。

あのころ、もう
私は田中さんとほとんど行き来なくなって、
篠原さんも田中さんとは疎遠になっていたような。

私いつの間にか、あなたに、仕事のことや事務所のことを話さなくなってた。

あなたの一言で、私をまとめていた何かが、ぱらっと切れて落ちた。
「うん。やめて、いい?」
「・・・」

当たり前ののように、そのすぐあとに私は篠事務所を辞めた。


ほんとうは、あなたのほうが、仕事やめたかったんだ! あのとき。

どうして今まで気がつかなかったのかしら? あたし。
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by chigsas | 2011-09-10 15:05 | 小説