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お祖母さまに手を引かれいつも、一緒だったんですね。

ふん! 

フン!!

父親が旧制高校に入るので、大きな都会に出た。
そして、翌年には叔父が出たんだそうです。

そこでまた、二人一緒の下宿生活が始まりました。
大学卒業まで続いたんでしょうねえ・・・・。

いえ、そのあとも、らしいんですが、私は知りません。

休みの度に帰省する兄弟のまばゆい制服姿が、
村の人に与える驚きと羨望。どんなだったんでしょう?

ときどき、心に描いてみても、
それは私には、なんの関わりもないこと、なんです。

お祖母さまから何度も聞いた話、少し寂しい。
夕焼けのような華やかさ。でしょうか?

こころの中を一瞬、風のように吹き抜けるだけです。

記憶にない父親が美少年だったと聞いても、
まるで、風に吹かれて色あせた映画のポスターが、
目に浮かぶだけ。
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そのころ、本当の母親は、少年たちの心に
どんな場を占めていたのでしょうねえ?

県庁の街は山の中に住む女にとって、たぶん
一年に一度行くことも叶わぬ場所だった? 

そう思えるのは、このごろになって、です。


お祖父さまの記憶も全然ありません。
都会で大きな会社に勤めていたという父親が亡くなって、
家族が屋敷に戻った時、
すでにいなかったと思います。

もしかしたら、記憶にないだけかもしれませんね。

いいえ。たぶん、
妹が生まれると間もなく父親が亡くなった。だから、

お祖父様さまが亡くなったのは、そのずっと前のはず。







母親に抱かれた記憶もありません。

気がついたらお祖母さまに手を引かれ、
どこへでもいつでも、一緒だったのです。
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影のように一年に1、2度現れる
くすんだ祖母と「駆け落ち」という言葉。
どうしても結びつかない。

その母親がいなくなったとき二人は、いったい
幾つだったのでしょうか?

父親と叔父? さあ?

お祖母さまの『自慢の息子たち』
に、なったんですね。

年子の兄弟は中学から
県庁のある市に下宿したといいいます。
まだ村では中学に行く子すら、
いなかったという時代の話、です。

仲の良い、二人の少年にとって、
樹の間に沈む屋敷はいったい
何だったのでしょうか?

美しい帽子と制服で、中学に通った二人。
自分たちに求められているものは
判っていたに違いありません。

大きな樹々に沈む暗い屋敷、
その立派な家を守ること、
そして、
「賢い美しい母親」をまもること
ですね。
思い出すだけで、うっとり、心が融ける。

母親と一緒に寝ていた妹が足で蹴った。a0134863_2141134.jpg
あれはたぶんワザと。

母親が無意識に布団と一緒に二人を
引き寄せようとしたけれど、
そーっと、お祖母さまの部屋に戻った。

まめ電球の下で、ふとんも、部屋も
冷えきっていたでしょうね。
あれはいつだったのかしら、
秋の終わり頃だったような、
廊下で、雨戸の隙間から月の光が
もれていたような・・・

でも、あれは「本当にあった」
ことだった、のでしょうか?


祖母は、山二つ越えた小さな村の、
若い男と駆け落ちした、といいます。

多分祖父が死んだ翌年ごろ、だった。らしい。
樹の間に沈む屋敷に、二人の息子が残されました。

影のように一年に1、2度現れる、
くすんだ印象の祖母と「駆け落ち」と言う言葉。
どうしても結びつかないんです。
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祖父が亡くなると
すぐに、祖父の弟が 
美しい嫁を取った。

だれがいつ、そんなことを
少女に話したんでしょう?
それもわからない。

もしかしたら、
お祖母さま自身の口から、
寝物語に聞かされたのかも
しれないでしょう?

そうかしら。

乾いた、香水とは違う香り、

冷たかった、いつも。
お祖母さまに、傍に
引き寄せられるといつも、

乾いていて、寒かった。

ぱさっと洗い曝された
木綿の寝間着。

母親の湿った暖かさ。

いつだったか夜中にそっと
逃げていったとき、
母親の寝間着には、汗の匂いも
少ししみ込んでいました。

思い出すだけで、
うっとり、心が融けます。