79. 頭の中 こぼれそうな 水を
あの日、新しい勤め先のこと私一人でしゃべって、帰って来た。
帰りがけにあなた、階段の降り口で足を止めて
「このちゃん、何かするとき、それをホントにしたいことなのかどうか。
じぶんの心に、聞いてみる、ほうが、いいんじゃないの?」
「うん」
あなたはそのままそこで止まったので、私、しかたなく、
さっさと階段降りて帰ってきました。
頭の中お水でいっぱいで、ちょっと首を傾けると、
ざーっと音を立てて流れそうだった。
あのとき、あなた、階段の上で、なにしてたのかしら。
今は、そう思うけれど、あの時は私、
自分の頭の中の「水」を零さないように、
一生懸命からだをまっすぐにして、歩くのがせいいっぱいでした。
でも、やはりあなた、なんにも考えてなかったんでしょうね。
覚えているのはそれだけ。
伊豆の旅行、行ったんだけれど、覚えていない。
「こういう所が、いいところなのかな?」
と思いながら辰井さんについて歩いた。辰井さんは楽しそうだったし。
小さな宿屋さんに泊まって、そこで、わたしにあったことも。
よく覚えていない。
辰井さんはすごく優しかったよ。
優しかった、だけ。それだけ。
帰りがけにあなた、階段の降り口で足を止めて
「このちゃん、何かするとき、それをホントにしたいことなのかどうか。
じぶんの心に、聞いてみる、ほうが、いいんじゃないの?」
「うん」
あなたはそのままそこで止まったので、私、しかたなく、
さっさと階段降りて帰ってきました。
頭の中お水でいっぱいで、ちょっと首を傾けると、
ざーっと音を立てて流れそうだった。
あのとき、あなた、階段の上で、なにしてたのかしら。
今は、そう思うけれど、あの時は私、
自分の頭の中の「水」を零さないように、
一生懸命からだをまっすぐにして、歩くのがせいいっぱいでした。
でも、やはりあなた、なんにも考えてなかったんでしょうね。
覚えているのはそれだけ。
伊豆の旅行、行ったんだけれど、覚えていない。
「こういう所が、いいところなのかな?」
と思いながら辰井さんについて歩いた。辰井さんは楽しそうだったし。
小さな宿屋さんに泊まって、そこで、わたしにあったことも。
よく覚えていない。
辰井さんはすごく優しかったよ。
優しかった、だけ。それだけ。
by chigsas
| 2010-03-17 08:31
| 小説