111. 赤い マグカップの 色が
気がつかないようにしていたんだ。
私、入り口で止まってしまった。
私の部屋、いろいろいっぱい出ていてごしゃごしゃ。
あなたが、私を連れて行ってくれたときは、
あの部屋には、なにもなかった。
押し入れの中に段ボールがいくつかだけ、だった。
「いいよ。入って」
「うん」
入り口の小さなコンクリートのスペースに靴を踏み入れながら、
そうだ! 冷蔵庫。
昨夜きれいに整理した冷蔵庫の中が、目に浮かんだ。
「私、ゆうべ、冷蔵庫、掃除したんだよ」
「?」
「冷蔵庫だけは、この部屋に負けないくらいピッカピカ」
あなた顔をこちらに向けて、しばらく黙って、
突然大きな声で笑ったでしょう。あのとき。
それから赤いマグカップをこちらに押してくれました。
コーヒーの香りも一緒にこっちに。
そのマグカップを無意識につかんだ。
顔にも体中にも、カップの色が映りました。
気がついたら、あなた、隣の部屋で仕事をしていました。
私、入り口で止まってしまった。
私の部屋、いろいろいっぱい出ていてごしゃごしゃ。
あなたが、私を連れて行ってくれたときは、
あの部屋には、なにもなかった。
押し入れの中に段ボールがいくつかだけ、だった。
「いいよ。入って」
「うん」
入り口の小さなコンクリートのスペースに靴を踏み入れながら、
そうだ! 冷蔵庫。
昨夜きれいに整理した冷蔵庫の中が、目に浮かんだ。
「私、ゆうべ、冷蔵庫、掃除したんだよ」
「?」
「冷蔵庫だけは、この部屋に負けないくらいピッカピカ」
あなた顔をこちらに向けて、しばらく黙って、
突然大きな声で笑ったでしょう。あのとき。
それから赤いマグカップをこちらに押してくれました。
コーヒーの香りも一緒にこっちに。
そのマグカップを無意識につかんだ。
顔にも体中にも、カップの色が映りました。
気がついたら、あなた、隣の部屋で仕事をしていました。
by chigsas
| 2010-11-28 13:44
| 小説