128. 夢で 見たことある ような
小さな喫茶店のドアの横、狭い急な階段、
あなたのお尻にくっつくように上りました。
真ん中が狭い廊下、両サイドに扉がくっついて並んでいました。
夢で見たことあるような、不思議な空間。
その真ん中あたり、鍵穴に鍵を差し込みながら
「狭くてびっくりだよ。きっと」
びっくりはしなかったけれど、確かに狭かった。
「ハモニカ長屋って聞いたことあるけれど、
ハモニカの一つの穴に入ると、中はこんななのね」
「・・・」
小さな丸テーブルのそばに折りたたみの椅子をだしながら、
あなた、声立てないで笑った。
「みんな古道具屋で揃えたんだよ。鹿浦さんに助けてもらって」
「鹿浦さん、・・親切なんだ」
「事務所持つのも、彼のアイデアだから、仕事もだしてくれるし」
あの晩、どんな話したか、ほとんどおぼえていません。
「おふくろ、反対なんだよ」
「ちゃんとした会社に勤めて、経験積んで・・・」
「いつも心配ばかりする。息子のこと全然信用しないんだ」
私があなたの話の中から拾い上げた言葉は、この三つだけだった。
あの日は、あなただけがほとんど話したのに。
あんなに話すあなた、私は始めてみた、と思ったことも思い出すのに。
私は、体の中に暖かい何かを抱え込んで、
黙っていた。嬉しかったんだ、きっと。だけど、
あなたのお尻にくっつくように上りました。
真ん中が狭い廊下、両サイドに扉がくっついて並んでいました。
夢で見たことあるような、不思議な空間。
その真ん中あたり、鍵穴に鍵を差し込みながら
「狭くてびっくりだよ。きっと」
びっくりはしなかったけれど、確かに狭かった。
「ハモニカ長屋って聞いたことあるけれど、
ハモニカの一つの穴に入ると、中はこんななのね」
「・・・」
小さな丸テーブルのそばに折りたたみの椅子をだしながら、
あなた、声立てないで笑った。
「みんな古道具屋で揃えたんだよ。鹿浦さんに助けてもらって」
「鹿浦さん、・・親切なんだ」
「事務所持つのも、彼のアイデアだから、仕事もだしてくれるし」
あの晩、どんな話したか、ほとんどおぼえていません。
「おふくろ、反対なんだよ」
「ちゃんとした会社に勤めて、経験積んで・・・」
「いつも心配ばかりする。息子のこと全然信用しないんだ」
私があなたの話の中から拾い上げた言葉は、この三つだけだった。
あの日は、あなただけがほとんど話したのに。
あんなに話すあなた、私は始めてみた、と思ったことも思い出すのに。
私は、体の中に暖かい何かを抱え込んで、
黙っていた。嬉しかったんだ、きっと。だけど、
by chigsas
| 2011-04-21 08:47
| 小説