Oおばさんがお掃除上手だった理由

こどものとき、母が寝込むと来てくれたOおばさんが、大好きだった。
親戚でもない母親の知り合い。その土地に越して間もなく出来た友人。

モノのない時代だった。夕飯のおかずを持ってきてくれたり、
部屋をきれいに片付けたり、割と無口なのにおばさんが居るだけで
居ここち良いうちになった。
おかずは田舎風の味の濃い煮物や焼き魚。
さっさっとお掃除をしているようには思わないのに、
へやがきれいにさっぱりする、不思議なおばさんでした。

おばさんは、きっと、きれいできちんとしたうちに住んでいるに違いない。
と。思いこんでいました。
あるとき母にいわれて、おばさんの家に頂き物のお裾分けをとどけた。
その頃おばさんは、夫に先立たれて、実家の離れに住んでいた。

母にいわれた通り
「ごめんください」
気どって声を上げると、すぐに引き戸を開けておばさんが姿を現した。

おばさんの足下には、げたが何足も乱暴にころがっていた。
「ま! まー!」
驚いて玄関の外に出てきて、後ろ手で戸をしめた。みると、髪もさんばら。
上がりがまちの向こうには何かいろいろと散らかっていたみたい。
よく覚えていません。

60年以上もたったつい最近、なぜか、Oおばさんの顏を思い出しました。
そうか! わかった!!

おばさんは、自分の家ではないから、お掃除上手だったんだ。
小学校低学年の年子が3人、男ばかり。お掃除の腕発揮なぞ出来っこ無い。

私は仕事をしなくなって24時間何をしてもイイ。
それで、裁縫箱の整理を思う存分楽しめた。

ちょっと違うけれど、似てるかもしれない。