47. たなか みちこ さん

少し時間がたったようだけれど、障子があいて、
小さなグレーの人が顔を出した。
不似合いなほど大きなサンダルをつっかけて土間におりて、
ゆっくりと近づいてきた。本当に小さな人だった。私の肩に頭がある。
「デッサンやりたいの? それとも、絵を描きたい?」
「はい・・・。両方。」
大きな優しい顔で、目が笑っている。

そのあと、何話したか分らないけれど、画板を貸してもらい、
デッサン紙と木炭をもらってその日、教室が閉まるまで、絵を描いた。
知らないうちに何人かの人が入ってきて人数が増えていったらしい。

ベレーの人は、「おさきー」と大きな声で皆に挨拶し、帰っていった。
私の横、通りながら、
「オッ、いいセンスしてるじゃない! 明日も来る? ネ」
絵を見もしないで、と思いました。

だんだん人が減って、最後まで残っていたのは花模様のパンツの女の子と、
ボーイフレンドらしい若い男の子。

「どこまで帰るんですか?」
「もう遅いから、Nからバスの方がいいかなぁ・・・。」
「じゃ、国電の駅まで、一緒、ネェ?」
ちらと、男の子に目をむける。
「うん、そうだね。」
言いながら彼は、彼女の画板と自分のをまとめて抱える。

「あたし田中です。たなか みちこ。みちこは道草の道、平凡でしょ。
この人は学校のクラスメート高田君。いつも、あたしにくっついてくる人」

「わたしは、おおた このみ、といいます。
おおたは多い少ないの多いの方。このみは漢字の木と実の2字なんです」
「そ。すてきな名前じゃないですか」

並んで歩き出したら、思っていてより小柄で年は私より相当上のようです。
女の子というのは失礼な、ちゃんとした女性です。

駅で
「じゃあ、また あした ね」
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by chigsas | 2009-10-25 14:50